低迷続きだった分譲マンション市場に、異変が起きている。平均20%という販売価格の大幅な値引きに住宅ローン減税の拡大効果もあり、「新築マンションに住みたい」消費者の意欲を刺激しているからだ。不動産経済研究所が16日発表した首都圏マンション動向調査によると、各社の在庫一掃の動きが奏功し、2月末の販売在庫は15カ月ぶりに1万戸割れとなった。
■大京、3月も勢い
大京などが2007年10月に分譲を開始した東京都江東区の「亀戸レジデンス」は昨年10月、他社に先駆けて価格引き下げに踏み切った。その後、2月までの5カ月間で全700戸のうち300戸を販売。すでに発売済みの650戸の9割が契約済みという。2月には毎週200組がモデルルームを訪れ、3月に入ってもその勢いは衰えていない。
同じく大京の「ライオンズ グラマシーハウス」(東京都板橋区)は昨年7月に分譲をスタート。1年半から2年で全150戸を売る計画だったが、1月末で完売した。事業統括部販売管理室の杉田昌之室長は、「考えていた以上に早い」と好調ぶりを喜ぶ。
野村不動産アーバンネットの2月のモデルルーム来場者数も前年同月比1.5倍に増えている。数字は集計していないものの、三井不動産の営業担当者は「確かに増えた」と手応えを感じている。東京都内のモデルルームには多くの来場者が詰めかけ、「通常の営業担当者の人数では対応が追いつかない」物件も出てきたという。
消費者の心を動かすのは「購入するなら今」という“買い時感”だ。年度末を控え、利益が少なくても今期中に在庫を処分したい業者もあり、質の高い物件を割安で買えると考える人が増えているのだ。長谷工アーベストが首都圏の居住者やモデルルーム来場者を対象に年明けに実施した顧客調査によると、「買い時だと思う」と回答した人が増加。中でもモデルルームを訪れた人で「買い時」と感じる比率は昨年10月調査と比べ10ポイント高い26%、逆に前回は50%を占めた「買い時と思わない」人が38%に減少した。
完成在庫を抱えるマンション開発事業者から安く買い取り、500万〜1000万円もの大幅値引きで売り出す「アウトレットマンション」市場の拡大も、割安感に貢献している。
■4月以降「一巡」?
ただ、このまま在庫処分が進めば、格安価格の物件は確実に減っていく。ある業界関係者は「4月以降に建設する物件は仕様や設備のグレードを落とし、適正な利益の取れる物件が主流になる」と明かす。
不動産経済研の調査で2月末の販売在庫が減少した一方、発売月内に物件が売れた割合を示す契約率は好調の目安となる70%を下回ったままだ。三井不動産レジデンシャル営業マネジメント本部の山村勝治グループ長は、「来場者は本当にいい物を見極めている」と分析する。
低金利や過去最大の住宅ローン減税など追い風はあるとはいえ、マンション各社は「先行きの不安が払拭(ふっしょく)されなければ本格回復はない」と当分、慎重な構えを示している。